小さな願いのセレナーデ
もちろんこの教室の一番のメインである、受験に向けた中高校生のレッスンや、時には大学からの紹介で、多忙な先生に代わって大学生の指導に当たることもある。
むしろこっちの下請け的な方向に力を入れて欲しいらしいが、保育園の迎えは十八時。
高校生や大学生は夕方以降の時間希望が多いので、なかなか指導に当たれないのが現状だ。

とは言え、まぁ何とか二人で生活できる程のお金は稼げてるので、現状には満足はしている。

レッスンが終わり、保育園の迎えまで少し時間があるので、少し予習のバイオリンを弾く。
次に教える曲のポイントを確認だ。
一応業務に関係なくても、講師は教室が空いていれば自由に使っていい規則にはなっている。現役でステージに立っている人も多く在籍しているからだ。


するとコンコンとドアのノック音が響き、手を止めた。

「アキちゃん」
「秀機君」

振り向くと、秀機君が入ってきた。

秀機君こと土屋秀機(つちやひでき)は、私より二歳年上のピアニスト。この教室では、主に音大受験生を担当している。
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