小さな願いのセレナーデ
彼女は立ち上がって、鼻高々と私を見下ろす。
「よく考えてくださいね」
そして現れた人影と共に、去っていった。


「……やっぱり、不似合いだよなぁ」
いつだって、私はそうだ。
煌びやかな同級生を横目に、私はパッとしない存在として扱われていた。

確かに親には経済力があって、膨大な学費を払ってくれた。そんな恵まれた環境だったことは認める。

でも、それだけだ。
それ以外、私は何も与えられてない。相応しい場所での相応しい立ち振舞いがわからない。


(頭、痛い……)
次第に頭はズキズキと痛む。
何とかバックから薬を探し出し、一粒取り出して口に入れた。

(やっぱり、止めよう)
ゴクりと水を飲みながら、考える。

もう久我家の人と、関わるのは止めよう。
瑛実ちゃんのことは気掛りだけど……誰か信用できる人にお願いしよう。玉井先生だって、私が話しをしたらわかってくれるだろう。

どうやっても、無理だった。
彼の隣に居る自分の想像も。
あの中で暮らす、私と碧維の姿も。


痛みの波が大きくなったので、ソファーの背もたれに深く腰掛ける。
ゆっくりと何度も深呼吸をすると、少し痛みは楽になったような気がした。
< 94 / 158 >

この作品をシェア

pagetop