No rain,No rainbow
「お待たせ、しました」

自動ドアを抜けると、お店の柱によし掛かる律さんに駆け寄った。

「あなたを待つ時間は、シアワセ、です」

はい。

当たり前に差し出された、ぬくい左手。

その手に、右手を委ねて歩き出す。

私の右手の薬指の爪に光るラインストーンを、優しく撫でる律さんの指先。

「かわい」

あなたの爪も、あなたも、あなたの気持ちも。

ちいさく呟いた。

優しくぬくい温度の律さんの指先。

少し、ささくれが出来ている。

その、人差し指すら愛おしい。

夜にでも、ハンドクリームを塗ってあげよう。





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