No rain,No rainbow
そ、そうですか?

平気な顔を装って、前を向いたまま答える私のこめかみに、律さんの視線を感じる。

「詩、さん」

「は、はい?」

呼ばれて、思わず声がひっくり返った私を、また、ふふ。なんて余裕で笑う。

「約束、です」

ふいに私の目の前に、自分の小指を差し出した。

「オレは、あなたが嫌がることは決してしません」

だからね?いつもあなたはあなたのままで、安心してオレの隣にいてください。

真っ直ぐな目。

差し出された小指にそっと小指を絡ませたら、骨ばった指先からも変わらずぬくい温度が流れてきて安心する。

「はい」

短く返した私の返事を、満足そうに笑って聞いてくれた、律さん。

心から安心する。


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