No rain,No rainbow
夕ご飯を食べながら、お喋りをする。

欠くことがない話題は、テレビもスマホも映画も雑誌も必要としない。

ただただ、何にもなくても私たちの会話で溢れる狭い部屋。

それは、食べ終わったお皿をふたりで洗うときになっても続いている。

たとえもし、会話がなくなったとしても、焦る必要なんてない。

一緒に居られればそれだけで、成立する時間。

そこはただ、穏やかで優しい空気に満ちている。

お気に入りのアールグレイを淹れて、律さんが腰掛けているソファーの余白に腰を下ろした。

「ありがとう、ございます」

丁寧に言って、紅茶のカップに口をつけた律さん。

「おいし」

さっきのあなたのキス、みたいですねぇ。

余裕の笑みで、私を見つめている。






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