No rain,No rainbow
「何を、考えてます?」

穏やかに問いかけられて、

「…律さんが、好きです」

するっと口をついて出た、素直な気持ちに自分でもびっくりして。

でも、これでいいんだと思える。

暗いし、まわりに人が居ないから、素直になっちゃいました。

照れながら伝えた、私の告白。

繋がれている右手がいちど強く、握られて、律さんの答えを知る。

「…奥の方、人いないかな…?」

あなたに、キス、したいです。

何度も何度も…

律さんの囁きは鼓膜で痛いほどに反響している。

もつれ合うように、手を繋いだまま、美術館の奥まで足を進めた。

お互いがお互いに、キスしたいがために走るように進んで。

焦っているために、転びそうになって、律さんに手を引っ張り上げてもらう。

顔を上げた瞬間、

「「…すごい…」」

その場にふたりで座り込んで、同時に同じ感嘆の声をあげた。






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