No rain,No rainbow
「オレは決して、あなたを、離しません。あなたから、離れたりしません」

真っ直ぐな律さんの目はなぜか、哀しげで。

私になにが出来るのだろうか…

心の中の思いは、気がついたら音になっている。

「……」

その刹那、時が止まる。

この空間の音も、止まる。

ゆっくり、でも止めどなく流れる、律さんの涙。

必ず受け止めると誓ったし、もちろん今でもそう思っている。

初めて律さんの涙に触れてから、何度も何度もこの場面に立ち会っているけれど、どうして今日はそんなに哀しそうなの…?

不安になって、強く強く律さんを抱きしめた。

律さんの頭を抱き寄せて、その髪を撫でる。

さらさらと、指の間を滑って落ちてゆく髪の毛は、律さんの心の中みたいで、押し寄せる不安を打ち消すようにまた、強く強く律さんを抱きしめた。



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