No rain,No rainbow
ふふふ。

左手の拳をくちびるに当てて、そんな風に笑う確信犯は、いつもの調子を取り戻している。

その薬指には、私の指にも嵌っている、シルバーの指輪。

その事実は、とても嬉しい。

ペアになっている相手が、目の前に居てくれることが。

すべてを言えなかったのは、つらかっただろうな。と思う。

今までたぶん、たくさん誤解もされただろう。

なにを言っても信じてもらえなくて、自尊心なんてとっくになくて。

自分が自分でいられなくなってゆく恐怖は、私にもわかる。

大事に想っている相手に、大事にしたい相手に、いちばん大事にされたいときに、大事にされないことは、なによりもこころを軋ませる。

そのこころをぶら下げながら、平気な顔をしてなんとか、毎日を過ごす。

同じ時を過ごしたわけじゃないから、もとから総てを分かろうとするのは、どだい無理で。

だから私は、いつも素直に気持ちをさらそう。

律さんの前では、ことさら。


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