No rain,No rainbow
「…律さん、ちょっともう、降参、です」

目を伏せたまま、つぶやけば。

「ん?」

なにが?

重ねられる言葉。

「顔、あげて?」

そのお願いは、逆らい難い。

ゆっくり顔を上げたら、

「雨が止むまで、ふたりきり、ね?」

囁かれて、私が持っていたカップを取り上げて、テーブルに置いたら、そのままソファーに倒される。

たくしあげられるセーター。

優しくぬくい、てのひらの熱。

私も、律さんのシャツを脱がす。

明るい部屋ですべてを晒し合う。

律さんの背中に回した手のひらに感じる、傷跡。

このすべてが律さんで。

私の愛する、律さんを形作っている。



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