ウソツキハート



そっとあたしの目の下にあてがわれたのは、あらたの暖かな親指の先で。



「さぁ、姫?何をご所望ですか?今なら何でもお聞きしますが?」



なんて少しおどけてみせたあらた。



涙を拭ってくれただけでも充分過ぎるくらい充分なのに。



あたしのおねだりをまだ、聞いてくれるのだ。



先ほど、頼みたかったことは、やっぱり頼んじゃいけない…。



「あらた。…キスが欲しい…。」



やっとのことで言葉にした。



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