政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
「好きなものって他にありますか」
「え?」
「あの…動物とか!私実家で猫を飼っておりまして。楓君は何かペット飼っていましたか?」
 
完全に関係のない話題を自ら振ってしまった。さっとエプロンで手を拭き姿勢を正した。

「動物?あぁ、猫なら俺も好き。可愛いと思う」
「…なるほど」
「それだけ?」
「それだけです」
「ふぅん」
 楓君は訝しげな表情のまま寝室へ向かう。

「そっか…猫と同じような位置なのか」

咄嗟に意味不明な質問をしてしまったが、そのお陰で楓君の言う“好き”の意味が分かったような気がした。
政略結婚でかつまだお互いのことをほとんど知らない私たちが好き合っているわけがない。
彼の発言の謎が解けたところで、私は残りの家事を片づける。
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