政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
「話したい事があるみたいで…日中会えないかって」
「…へぇ、そうなんだ。返事は?したんだろ?」
「ううん。まだ返してない。一応既婚者だから…楓君に許可貰おうと思って」
「…既婚者」
私をしっかりと見据えたままそう諳んじると突然彼が私に体を向けた。
そしてそのまま私の頬に手を添えると、
「会ってきていいよ。でもそれは沖縄旅行行った後にして」
「か、楓君…?」
「あと忘れんなよ」
彼の顔が近づくのに身動き一つ出来ないのはそれ程までに彼の眼光が鋭かったからだ。
「日和は俺の妻だから。一生ね」
「…っ…ん」
そう言った彼がぐっと顔を近づけ唇を塞ぐ。
先ほどまで飲んでいたココアの味が再度蘇った。唇の冷たさと反してお互いの口内の熱さが全身に伝染していく。
以前も彼は同じようなことを私に伝えた。私自身、それはしっかりと認識している…―はずだ。
あのパーティー以来の深いキスに体が脱力していくのを感じながらも楓君のパジャマの裾をギュッと掴んだ。
角度を変えて繰り返されるキスに徐々に苦しくなっていく。
慣れたと思っていたキスだが、楓君が相手だとまるで指導されているようなキスになる。
ようやく唇が離されるが、どこを見ていいのかわからなくて視線を彷徨わせる。
「おやすみ」
「あ…うん、おやすみなさい」
半分ほど残っているココアを残したまま楓君が立ち上がる。
どうしてキスをしたのか、など聞けるわけもなくしばらくはソファの上でボーっとしていた。