政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
翌朝目覚めると10時を過ぎていた。

勢いよく体を起こすと窓が開いていて心地よい風が客室を満たす。
すぐに隣にいる楓君に目をやると「おはよう」と今肌を通り抜ける風と同じくらい爽やかな笑顔を見せる。

肘をついてまるで私の寝顔を見ていたかのような体勢をしている。
赤面しているであろう熱の宿る顔を隠すようにすぐに布団の中に戻ると昨夜のことを思い出し羞恥でどうにかなりそうだ。

 今のところ痛みはなく、行為の前半までにそれは消えていた。下腹部に違和感もない。
楓君が優しくしてくれたからかもしれない。
ちょうどベッドの脇に脱ぎ捨てられたセクシーな下着が無造作に置いてある。

「記憶ある?」
「もちろん…あるよ」
「それはよかった」
「ごめん、寝坊しちゃって…今日も観光なのにね」
「いいよ。日和の体調の方が大切。お腹空いてない?朝食運んでもらうから言って」
「…じゃあ、食べようか」
 
 わかった、と言って私の額にキスをするとベッドから体を離してバスローブを羽織り、備え付けの電話で連絡をする。
その姿を見ながら昨日のセックスを思い出す私はどうかしている。
この後、朝食をとるとタクシーを利用して観光を楽しみ、客室露天風呂にも何度か入ったりして非常に優雅で素敵な旅行を楽しんだ。
抱かれたのは二日間のうちの一日だけで楓君は幾度となく私の体を気にかけていた。
無理はしていないつもりだったが、確かに少し疲れが残っている。


 二日目はすぐに寝入ってしまったが、彼に抱きしめられながら深い眠りにつくことが出来た。

 私たちの距離は確実に縮まった。
本物の夫婦に近づいているとそう思っていた。
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