政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
「今日は…話があるんだよね?いったいどんな…話?」
「それはケーキ食べてからにしよう」
「うん…」

 彼が今日私を呼び出した理由を訊きたかったが、彼は頬杖をついたまま穏やかに目を細める。

 楓君はどうしているだろう。
政略結婚とはいえ、休日はほぼ一緒に過ごしていた。
周りから見れば普通の夫婦と変わらないと思う。それは楓君が努力をしてくれているから成り立っているのだと思うと感謝しかない。

「今、違う事考えてたでしょ」
「ううん。何も…考えてないよ」
「そう?俺はずっと日和を見てきたから何でもわかるんだよね」
「え?!何でも?!」

 ちょうど楓君のことを考えていたことも彼に見透かされているのではと思い胸が大きく跳ねた。
幼馴染とはいえ恋心が抑えきれていないのを知られたくない。
しかし松堂君は頭がいいし勘もいいし昔から一緒だから何でもお見通しなのは本当だ。

「旦那さんのことでしょ」
「…」
「政略結婚なのに好きなの?」
「え…―」
「だって、親が決めた相手と家のために結婚したんでしょ?それって普通辛くない?」

 穏やかな口調の中に潜む針がチクチクと私に向かって攻撃してくる。
それは、と言って視線を木製のテーブルに移すとちょうど店員さんがコーヒーとケーキを運んでくる。

「お待たせしました。ケーキセットになります」

 チョコレートケーキとコーヒーが私の前に並ぶ。
店員さんが離れると、私は真っ直ぐに前を見据えた。

「結婚したことは…後悔してないよ。ただ、辛いのはそうだね…どうせならお互い気持ちがなければ…ない方が良かったんだけどね」

 片思いをしていてそれが政略結婚の相手。それは言葉に表せないほどに辛くて苦しい。
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