政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
「…今日は、別々に寝よう」
「なんで?」
「理由はないけど…ちょっと疲れてて」
「俺は日和と寝たいんだけど」
「…分かった」

 無理に抱くつもりはないし、ただ日和と会話をしたかっただけだが日和にとって一緒に寝るということはまだハードルが高いのだろう。
いつになったら慣れてくれるのだろう。

 半ば無理やりになってしまったが、日和と一緒に寝室に向かう。
二人でベッドの中に入ると日和はすぐに目を閉じた。

 すぐに触れられる距離なのに、手を伸ばせばすぐに抱きしめられるのに…―。
政略結婚という形で無理に結婚させた罰なのか罪悪感で感情が埋まっていく。

「日和、今日ずっと変だけど何かあった?」
「…な、何もないよ…!楓君は…何か見たの?」

 俺に体を向け泣きそうな瞳で俺を見つめる。
おそらく日和は松堂から抱きしめられていたのを俺が見ていたのではないかと心配しているようだ。
本当は見たのだけど、それを言ったら日和の罪悪感が増えるだろう。
別に不倫をしているわけでもないし、仮にしていたとしても無理に結婚した俺の責任が大きいのだから責められないだろう。
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