政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
「素敵な旦那さんでよかったね!」
「うん…そうだね」
舞衣子はお見合い結婚らしいけれど、旦那さんのことは好きなのだろうか。
有名な大企業の娘となれば結婚相手も彼女に見合う家柄になるだろう。しかし、それと恋愛感情は全くの別だと思っている。
「ねぇ、舞衣子は…結婚する相手のことは…」
と、足音が聞こえ私と舞衣子はぴたりと動きを止めた。
楓君が自分の部屋から出てきた。舞衣子が立ち上がった。
「じゃあ、私帰るね」
「え?!もう?」
「だってせっかく早く帰宅してくれたんだから二人でゆったり過ごしてよ」
「…でも」
「お邪魔しました~」
語尾を伸ばして小さめの鞄を手にすると玄関へ向かう。私は彼女を見送る。
舞衣子の結婚についてもう少し聞いてみたかったけど、それは次回会った際にすることにした。
舞衣子を見送り、リビングルームに戻る。まだ日が出ている平日の日中に楓君と一緒にいるということが不思議だった。多分結婚して初めてだ。