政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
楓君は悩むような表情をした後に、口を開いた。
「わかった。じゃあ俺が経営しているホテルの清掃か事務紹介する」
「え…楓君の?いいよ、それって楓君の妻だってわかるってことでしょ?周りの人に気を遣わせちゃうよ」
「いいじゃん、別に」
「良くないよ」
「なら、直接かかわる社員には伝えないでおく。これでどう?」
「つまり、私が楓君の奥さんってことがわからないってことだよね?」
「そう」
「それならいいかも」
「じゃあ、話付けておく。ちょうど人手が足りないところいくつかあったから」
楓君の紹介でホテルの仕事をすることが出来そうだ。
ほっとしたのも束の間、楓君が「再来週なんだけど」と続けた。
「パーティがあるからその日はホテルに泊まる」
「…ホテル」
サラッと言ったそれはすぐに清川さんが言っていたことだと悟る。
「それって!私は行かなくていいのかな」
「え?」
「私は行かなくて平気?」
「あぁ、うん。大丈夫」
来てほしいとも思ってもらえていない事実に胸がえぐられそうになった。
私では妻の役割は出来ないということだろうか。清川さんの顔が思い浮かぶ。
「楓君!それ、私も行きたい」
「…なんで?」
「だって!楓君の奥さんでしょ、私」
「そうだけど」
珍しくその気だるげな目を見開き、驚いている。