エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
焦ってしまって、うまく言葉にならない。首をかしげる駿太郎さんを必死に見つめ、告げた。

「赤ちゃん、できたみたいです」
「え……」

私の言葉を聞いた瞬間、駿太郎さんが吐息のような声とともに固まった。
私を見下ろした表情が動かない。どうしてしまったのだろう、と私まで凍りついてしまう。
しばし、言葉に詰まった駿太郎さんは、次に視線を困惑げに揺らした。私から目をそらしたまま、何度か確認するように頷いた。

「妊娠したんだね……そうか」
「はい、駿太郎さんの赤ちゃんですよ」

答えながら、私は違和感に戸惑っていた。
思っていた反応と違うのだ。彼は確かに何事にも冷静で大騒ぎする人じゃない。だけど、我が子が妻のお腹にいるとわかったときの態度も、こんなものなの?

「う、嬉しいよ。産まれるまで、協力して頑張っていこう」

駿太郎さんの困ったような笑顔に、私の元気だったいっぺんに心はしわくちゃになってしまった。頷くことしかできない。

「ほら、身体に障るから、寒い玄関にいちゃ駄目だよ。リビングに行こう」

駿太郎さんは私の背を押して、リビングに入る。作りかけの夕飯を見て「手伝うよ」と手洗いと着替えに行ってしまった。
リビングに立ち尽くし、私は唇を噛みしめうつむいた。

泣いちゃ駄目だ。期待していた反応と違ったからって。
だけど、駿太郎さん。嬉しくないんですか?
私、あなたの赤ちゃんを授かったのに……。




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