エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
浅い眠りだったような気がする。何度も不快な夢を見て覚醒していたので、朝起きてもスッキリしていなかった。

身体を起こし、リビングダイニングに入ると、芽衣子はすでに着替え朝食の仕度をしていた。朝は簡単なものにしようとふたりで決めているので、シリアルとヨーグルトが並んでいる。

「駿太郎さん、おはようございます。今、コーヒー淹れますね」

芽衣子はいつもと変わらぬ笑顔だ。昨晩の不安そうな表情が過り、罪悪感ともつかない複雑な気持ちになりながら、洗面所へ向かう。
戻ってくると、ふたり分のマグカップが並んでいた。

「ミルク温めておいたんですけど、カフェオレにします?」
「ああ、そうしようかな」

芽衣子は自分のマグカップにホットミルクを注ぎ、俺のマグにコーヒーメーカーで落としたコーヒーとホットミルクを注いだ。芽衣子もいつもはコーヒーを飲むのに、今朝はホットミルク。
そうか、カフェインを控えているのだと気づき、芽衣子の腹部に無意識のうちに視線をやっていた。
芽衣子は俺の視線に気づいたか気づかないか。席につき、両手でマグを包んだ。

「今日は忙しくて仕事のお休みが取れないので、明日、病院に行ってこようと思います」

産婦人科にいくということだろう。俺はトクトクと不穏に鳴る鼓動を感じながら頷いた。

「あの」

芽衣子が顔をあげた。その表情は不安そうで、悲しそうだった。
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