エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
「芽衣子は本当におとなしくていい子なんだ。彼女が悪い男につけ込まれずに成長できたのは、鉄二が守っていてくれたおかげだね」

褒めたせいか、鉄二が簡単に相好を崩す。

「あいつどんくさいから、結構面倒は見てたけどな。でも、芽衣子本人も男関係はガードが固かったね。見た目が悪くないからモテはするんだけど、ぐいぐい来られると引いてしまう。駿太郎みたいにおだやかな男がちょうどいいんだろうな」

芽衣子の想い人について詳細な言葉は出てこない。鉄二も把握していない様子だ。
もっと手がかりはないか。俺が言葉を選んでいると、すでにほろ酔いの鉄二がしみじみとした口調で言った。

「俺はつい芽衣子に偉そうな態度ばかり取ってしまうけど、それでも可愛い妹だと思ってるんだ。芽衣子は駿太郎を好いている。どうか、子どもが産まれても、女として大事に幸せにしてやってくれ」
「ああ、もちろんだ」
「頼んだぞ。本当に、頼む!」

そう言ってがばりと頭を下げるのだ。騒がしいバルとはいえ、片方が頭を下げている状態は目立つ。俺は焦って、顔を上げさせようと言った。

「彼女も産まれてくる子どもも、俺が必ず幸せにする。だから、そんなふうにかしこまらないでくれ」

今はぎくしゃくしているなどとは言えないけれど、気持ちの上では芽衣子を幸せにするのは俺だと思い続けている。それだけは譲れない。
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