もう⋅⋅解放⋅⋅して⋅⋅⋅下さい

✰✰もう···



あ然····としている。

電車に乗ろうと並んでいると
目についた·····人·····つむ···ぎ····っ

横には、背の高い
男の俺でも目をひく男性が。

その男性が男の子を片手に
片手にキャリアケースをひいている。
紬·····の·····お腹·······

夢では·····ないかと
一度目を閉じて
開くと·····
お腹が大きい·····

男性が紬に何か耳元で話している
紬は、優しい顔を男性に向けて
何やら話している。

そんな二人を
ぼぉーっと、見ていた。
電車が到着して
隣の車両に乗る。

同じ車両には、乗れなかった。

男性も男の子も
日本人に見えるが
会話は、英語だ。

時折、隣の車両をみると
紬は、腰掛けていて
男性は、男の子の追いかけていた。

幸せそうな家族だ。
回りの人達も三人を見ている。

男の子が椅子に座り
紬のお腹を触りながら
話をしている。

その男の子の横に男性が座り
紬と男の子に話しかけている。
男の子の頭を撫でながら。

男性の左手に指輪がはめられている。
男性が紬の手を取り
手の甲を撫でる、紬の左手にも
指輪が輝いていた。

俺は·····もう·····
認めないと行けないんだ。
諦めないと行けないんだ。
どこかでは、わかっているのに
認めたくない、俺がいた。

あの日、紬が倒れて
高橋さんが紬の代理で
色々な手続きをされた。

母は、やはり自分は、
自分達の事ばかりで
口では、紬を気にしていると
言いながら
そうではなかったのだ
と、言う事を理解して
子供が授からない紬に対しての
自分の言動の時から
自分は、何も変わってないのだ
と、嘆き悲しんだ。

それからは、
自分の実家の近くに
引っ越しをして
兄姉と田畑をやっている。

親父と暮らしていた家を
売却して。
俺にも半分と言ったが
一部だけもらった。
まったく受け取らないと
母親も嫌だろうと思い。

たまに、メールや電話でやり取りを
している。お盆やお彼岸には
親父の墓参りにでてくるから
その時、一緒に墓参りに行ったり
一緒に食事をしたりしている。

茜とは、きっぱり縁をきった。
お互いの弁護士を立てて。

葵の事は、可愛いが
葵をみると紬やあのときの事を
思い出してしまうから
認知もしないし
お互いの同意の上と言うことで
慰謝料とかもなく
葵への養育費のみを
お互いの弁護士が計算して
半分だけを払うことになった。

今では、茜は、
スーパーの店長として転勤してきた
男性と籍をいれて暮らしている。
俺の母親とも、もう合ってはいない。

会社絡みになった離婚届の為
俺は、工場に転勤になった。
肩書は、工場長であるが
研究からはずされては
左遷と同じだったが
俺は、自分のやれる事は
なんでもやった。
暇を作ると色々考えてしまうから
何も考えなくて良いように。

紬と暮らしていた
マンションも売却した。
その中から葵の養育費を
支払った。

今は、工場の近くに
1DKのアパートを借りている。

俺のどこかに
紬が俺を気にかけて
戻ってくれるのではないかと
安易な考えがあった。

本当に能天気な、バカな奴だ。
と、改めて思う。


紬達は、電車を降りた。
紬達がいた車両の人達は
紬達家族を目で追っている人が
多かった。
頭が動いているから
わかりやすい。

美男美女の夫婦に会話は英語と
目をひくには充分だ。

俺が、同窓会に行かなければ
あの男性の位置に俺が
いたのだろうか?
と、思うが·····
母親だけを責めていたが
俺自身も子供の事を
他人に愚痴る時点で
紬を責めていたんだ
と、今ならわかる。

あんなに紬に振り向いて欲しくて
何度も気持ちを伝えて
やっと、交際までに至ったのに。
手に入ったら
大事にしないのかと
言われても返す言葉もない。

やはり·····俺では
   ダメ·····だったのだ。
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