社長と同居しているだけです。結婚に愛は持ち込みません。
葵さんのドキドキ発言から一週間後、奇跡的に早い回復で、葵さんは退院が決まった。
驚くことに、松葉づえもなく、歩けることは医師も驚いていた。
退院の日、私と秘書の牧田さんは葵さんを迎えに病院に来ていた。
分かってはいたが、葵さんはナースにモテモテだったようだ。
沢山の花束や、ラブレターのような手紙が病室にどっさりと届いている。
「葵さん、退院おめでとうございます。…すごい花束ですね。手紙もこんなにたくさん頂いて、嬉しいですね。」
「花梨、妬いているのか?…可愛いな。」
「…っな!!」
葵さんはニヤリと笑いながら、私をからかっているようだ。
しかし、最近の葵さんは、急に甘い言葉を言うようになり、心臓に悪い。
すると牧田さんは呆れたように、溜息をついた。
「お二人とも、イチャイチャするのはご自宅に帰ってからにしてください。」
私達は、牧田さんの運転する車に乗り、自宅に向かうはずだった。
しかし、どうやらいつもの帰り道と景色が違うようだ。
「あ…あの…いつもと方向が違いませんか?」