社長と同居しているだけです。結婚に愛は持ち込みません。


葵さんのドキドキ発言から一週間後、奇跡的に早い回復で、葵さんは退院が決まった。
驚くことに、松葉づえもなく、歩けることは医師も驚いていた。


退院の日、私と秘書の牧田さんは葵さんを迎えに病院に来ていた。
分かってはいたが、葵さんはナースにモテモテだったようだ。
沢山の花束や、ラブレターのような手紙が病室にどっさりと届いている。


「葵さん、退院おめでとうございます。…すごい花束ですね。手紙もこんなにたくさん頂いて、嬉しいですね。」


「花梨、妬いているのか?…可愛いな。」


「…っな!!」


葵さんはニヤリと笑いながら、私をからかっているようだ。
しかし、最近の葵さんは、急に甘い言葉を言うようになり、心臓に悪い。

すると牧田さんは呆れたように、溜息をついた。


「お二人とも、イチャイチャするのはご自宅に帰ってからにしてください。」


私達は、牧田さんの運転する車に乗り、自宅に向かうはずだった。
しかし、どうやらいつもの帰り道と景色が違うようだ。

「あ…あの…いつもと方向が違いませんか?」


< 62 / 82 >

この作品をシェア

pagetop