社長と同居しているだけです。結婚に愛は持ち込みません。
私達4人は事務所のテーブルを囲むように座った。
すぐに葵さんは、私の肩に手を置いて、紹介をしてくれた。
「紹介します。俺の妻で、花梨です。」
私は二人に向かって、立ち上がり深く頭を下げて挨拶した。
「…花梨と申します。よろしくお願いいたします。」
すると、高橋さんと柿崎さんは拍手をしながら、笑顔で立ち上がった。
「おめでとうございます。なんか私達も幸せな気持ちだなぁ」
高橋さんが話をする横で、柿崎さんは嬉しそうに涙まで流しているように見える。
「高橋アニキも柿崎さんも、大袈裟だなぁ…」
「いつもくよくよ悩んで、メソメソしていた葵が結婚するなんてなぁ…」
高橋さんの言葉に驚いて、聞き返してしまった。
葵さんがくよくよしたり、メソメソとは信じられない。
「葵はね、何かあるとよく一人でここに来るんだよ。それで、だいたい最後にメソメソしてたなぁ。」
あの、俺様の葵さんがメソメソとは驚いた。
私は目を丸くして、葵さんを見てしまう。
「花梨、そんな目でみるなよ。俺だって人間だ。悩みだってあるし、挫けることもある。」
「そ…そうなんですね…」
すると、涙を流して喜んでくれた柿崎さんが、私の両手を自分の両手でギュッと握りしめた。
「花梨さん、葵君はこうみえて昔からナイーブなの。傷つきやすいの…でも心はとても優しいのよ。これからは貴女が、葵君を支えてあげてね…」
「…はい。必ず支えになれるよう頑張ります。」
柿崎さんは、優しく微笑んで頷いてくれた。