社長と同居しているだけです。結婚に愛は持ち込みません。

その後、高橋さんは園内をぐるりと案内してくれた。
こんなにゆっくり、可愛い動物たちを見たのは初めてかも知れない。
動物園に来たのも久しぶりだ。


そして、出口が近づくと、高橋さんは最後に葵さんに真っすぐ向かい合った。


「葵、俺はお前を兄のように近くで見ていたからわかる。花梨さんはお前にとって、すごく大切な女性なんだな。幸せななれよ…そして、また二人で遊びに来てくれ。」


高橋さんは、葵さんの肩をポンと叩くと手を振ってくれた。



後から葵さんに聞いた話では、高橋さんも柿崎さんも、葵さんが小学生の頃からお世話になっていたようだ。
学生時代も、社会人になっても何かあると、この動物園に来ていたという。

ただ、いつもここに来るのは一人で来ていたそうだ。
ここに連れてきてくれたのは、本当に私が初めてだったようだ。


動物園からの帰り、葵さんが私に話してくれた。


「花梨、今日は少し恥ずかしかったが、俺をもっと知って欲しいんだ。そして、これからまた新しい俺たちの未来を創っていこうな…」


葵さんの言葉が、心の中を熱くする。
これからずっと…ずっとこの人と一緒に生きていきたい。

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