社長と同居しているだけです。結婚に愛は持ち込みません。
「葵さん、柚杏(ゆあ)、支度はできたの…出掛けるわよ…」
「柚杏、今日も可愛いなぁ…パパのお姫様だな…」
「うん。パパだぁ~い好き。」
早いもので、葵さんと結婚してもう3年。
葵さんと私のところに、天使が舞い降りてくれた。
名前は柚杏、もうすぐ2歳になるところだ。
葵さんはすっかり甘々のパパになっている。
結婚前の葵さんのイメージからは想像もつかないほどだ。
今日はこれから親子3人で動物園に行く予定だ。
もちろん、高橋さんと柿崎さんのいる動物園だ。
「パパ~、すごいよ…お猿さんがいる!」
はしゃいでいる柚杏と葵さんの後ろから、声を掛ける人がいる。
「葵、…もうすっかりパパしているな。」
声を掛けたのは、高橋さんだ。
高橋さんは以前とまったく変わりない、日焼けした優しい笑顔だ。
「高橋アニキ、…久しぶりです。見てください娘の柚杏です。俺に似て美人でしょ。」
高橋さんは、葵さんの溺愛に溜息をつきながら微笑んだ。
「葵、柚杏ちゃんにボーイフレンドが出来たら大変だな…困ったパパになりそうだな…」
「柚杏にボーイフレンドなんて許せない。考えただけで頭が痛いよ…」
その会話を、少し離れたところで聞いていた柿崎さんが、呆れた顔をする。
「花梨さん、デレデレのパパで大変ね…でも…幸せそうで良かったわ…」
私は今、とても幸せです。
母のお見舞いで行った公園で、啓介さんを助けたところから、私の運命は大きく変わったのかも知れない。
この運命に感謝です。
私は今でも…これからも…ずっとずっと…
葵さんを、尊敬して、信頼して、愛しています。
今の私達は結婚に、恋も愛もたっぷり持ち込んじゃっています。
~END~