社長と同居しているだけです。結婚に愛は持ち込みません。
残された私は、気まずい。
…いいや、すごく気まずい。
どうしたものかと、俯いていると、先程とは全くトーンの違う葵さんの声が聞こえた。
「…おい。お前は、経理部のようだな。」
「は…はい。」
「仕事は続けたいか?」
(…まさか、クビとか左遷とか無いよね…)
「はっ、はい。…私はどこかに転勤でしょうか?クビでは無いですよね?」
すると、葵さんはクスクスと笑いだした。
私としては、笑い事ではない。なぜ、笑っているのか、意味が分からない。
「…なぜお前は、そんな発想になるんだ。俺は、お前が俺と結婚しても、会社で働きたいか?という意味だ。」
「け…け…け…結婚ですか?」
「当たり前だろ、お前は今日、お見合いに来ているんだぞ。」
「で…で…でも…葵さんは、断りますよね?」
葵さんは、いきなり怒ったような表情になった。
なにか、私はいけないことを、言ったのだろうか?
「俺はお前と結婚するぞ。…花梨。」
「…はぁ?…意味が分かりません。」