社長と同居しているだけです。結婚に愛は持ち込みません。
葵さんは、真っ直ぐ私の目を見て話し出した。
端正な顔立ちに、直視されるのは心臓に悪い。しかし、目を逸らすことも出来ない。
「俺は、フォワードグッドの代表で終わるつもりは無いんだ。親会社でもある、グッドグループの代表を狙っている。しかし、そのためには、結婚しているということが、グループ内の暗黙の決まりのようなものだ。だから、結婚する必要があるんだ。」
「…だとしたら、私では無くて…他にも葵さんと結婚したい女性は、沢山いますよね?」
葵さんは、その言葉を聞くと、ケラケラと面白そうに笑い出した。
「…お前は、俺に全く興味がなさそうだな…気に入った。花梨、俺では不服なのか?」
さっきよりも、柔らかい眼差しの葵さんに、心臓がドクンと勢いよく跳ね上がった。
不服なんて有り得ないが、私ではあまりにも葵さんと、不釣り合いだ。
「…ふ…不服なんて…ありませんが…私では…釣り合いませんよ…」
すると、葵さんは少し悪戯な表情に変わった。
「花梨、…だったら、俺がお前を変えてやるよ。心配するな。」
葵さんは、優しいのか、意地悪なのか、俺様なのか、まったく分からない。
ただ、分かっているのは…この男性は美し過ぎるということだ。