君との想い出が風に乗って消えても
美し過ぎる転校生



 僕は。
 とても大きな衝撃を受けた。


 五月の中旬。
 初夏の香りも混じり始めた頃。


 今はホームルームの時間。

 そんなときの出来事。


 あまりの衝撃で。
 僕の心臓がドクンと跳ね上がった。


 なぜなら……。


「今日から、このクラスの仲間になる花咲加恋さんだ。
 花咲、みんなに挨拶を」


 今日から転校して来た女の子。
 花咲加恋さんという女の子()が……。

 とても美しい……‼


「花咲加恋です。よろしくお願いします」


 ……‼

 また衝撃を受けた。


 なんて美しい声……‼


 僕がそう思ったと同時に。
 クラスの中がざわついた。

 ざわついたのは特に男子たち。

 その気持ち……わかる……。



 花咲加恋さん……。


 見た目は美しくて可愛らしい感じ。

 髪は艶がありサラサラなストレートヘア。

 目は大きく瞳の色はブラウン。

 肌は白く透き通った感じ。

 声も透明感のあるきれいな声。


 ……って。


 僕は、はっと気付いた。

 何をそんなにもジロジロと女の子のことを見てしまって……と。

 これでは、まるでセクハラになってしまう。

 そう思った僕は、慌てて花咲さんから目を逸らした。



「草野」


 そのとき。
 担任の先生が僕の名前を呼んだ。


「はい」


 返事をする、僕。


「花咲は草野の隣の席に座ってもらうから、いろいろと教えてやってくれ」


「はい」


 花咲さんが僕の隣の席……。


 それを聞いたら。
 少しずつ胸の鼓動が高鳴るのを感じた。


 すでに花咲さんは僕の隣の席に向かって歩き出している。

 花咲さんが歩いてくるとき風が生まれた。
 その風が花咲さんの髪をやさしく揺らしている。

 その姿は。
 絵になるほど美しくキラキラと輝いていた。

 花咲さんが通った後の空間は。
 目には見えないけれど。
 花が咲いたような、そんな雰囲気を感じる。

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