君との想い出が風に乗って消えても



 そんな雰囲気を感じるからか。
 花咲さんが歩くだけで男子たちは、ざわざわしていた。


 そんな雰囲気の中、花咲さんが僕の隣の席に着いた。


 花咲さんは椅子の背もたれに手を乗せた。

 繊細そうな細くてきれいな指。

 その指で椅子の背もたれを後ろに引き、スッと座る。

 とても上品な座り方。
 そして美しい姿勢。


 そんな花咲さんのことを見つめている……見惚れていると……。
 花咲さんが僕の方を見た。


「草野くん」


 美しい声で僕の名前を呼んだ。


 花咲さんの美し過ぎる声が。
 耳から全身に広がり。
 何ともいえないような心地良さを感じる。


「わからないことがあったら教えてね」


 そんな感覚になっていると。
 花咲さんはやさしく微笑んでそう言った。


「……うん……」


 ……なんか。
 照れてしまう。

 花咲さんと言葉を交わすと。


「……僕は草野優、よろしくね」


 そう思いながらも。
 花咲さんに挨拶をした。
  

「こちらこそよろしくね」


 花咲さんも笑顔でそう言った。

 その笑顔は天使のよう。


 僕は、その笑顔に見惚れていた。


< 2 / 40 >

この作品をシェア

pagetop