君との想い出が風に乗って消えても
初詣



 年が明けた。



 昨年の間は。
 できるだけ考えないようにしていた。

 それを考えると心配になるし。
 胸の奥が締め付けられるように苦しくなるから。

 それから……怖くなってしまうから。
 もし本当にそうなってしまったらと思うと……。


 僕が考えることを避けていたこと。
 それは……。

 昨年、加恋ちゃんが転校してきた初日に言った、あの言葉のこと。

『来年の今頃は、ここにはいない』

 でも、とうとうその年になってしまった。


 ……今年……。

 本当に加恋ちゃんは、いなくなってしまうのだろうか……。


 でも、いなくなるってどういうふうに……?

 ……転校……?

 いなくなるといったら、そういうことしか思いつかない。

 それ以外、考えられない。

 ……というか、考えたくない。

 それ以外のことなんか……。



「優くん……?」


 ……‼


 加恋ちゃん……。


「どうしたの? なんか元気がないみたい」


 加恋ちゃんが心配そうにしている。


 自分では気付かなかったけれど。
 たぶん難しい顔をしていたのだと思う。


「そ……そんなことないよ。元気いっぱいだよ」


 加恋ちゃんを心配させないように。
 急いで表情を緩めてそう言った。


「本当? それならよかった」


 加恋ちゃんは安心したようにそう言った。


「ありがとう、加恋ちゃん」


 加恋ちゃんは本当に優しい。

 その気持ちがすごく嬉しい。


 そうだよ、せっかく加恋ちゃんと一緒にいるときに考え込むのはやめよう。



 今日、僕と加恋ちゃんは初詣に来ている。


 加恋ちゃんの隣を歩きながら。
 僕は強く願う。

 それは、ただ一つ。


 加恋ちゃん。

 加恋ちゃんは僕の隣にいる。

 笑顔。
 優しさ。
 ぬくもり。

 それは確かに存在している。

 僕が加恋ちゃんの全てを守る。

 そして加恋ちゃんとずっとずっと一緒にいる‼


 それが僕のたった一つの願いだから……。


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