ムボウビハート



 「ね?真夜中の信号は、キスするため、だよ。きっと。」



赤信号の短い、束の間の時間。
 

 
きっと、恋人たちに与えられた、神様からの時間の隙間。



誰もいない。



見ているのは、お月さまだけ。



「そーだな、きっと。じゃ、青信号をやりすごそうか。」



ニヤリと妖しく笑う、あらた。



「望むところ、です。」



余裕のふりして返した、あたし。



強く抱き寄せられたら、あらたの腕の中。



「あんず。俺を、見ろ。」



言われなくたってあたしは、ずっとあらたを見続ける。



目が合って、キスをした。



「青信号、何回でもやり過ごせそう、だな。」



横断歩道の脇。



地べたに座り込んで、熱いくちづけ。



厚い雲が、ところどころ、お月さまを隠す。     



お月さまも照れてるんだね、きっと。
     



  



    『ツキアカリハート』






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