ムボウビハート



 「あんず。おみやげ。」



なんて、主語がないあらたのコトバに顔を上げれば。



「わ!!」


思わず、感嘆の声を上げたのは、目の前に差し出された、丸い赤のせい。


「あらた!あたし大好きなの!ありがとう!!」


「そ?良かった。」


はにかんで笑う、あたしのあらた。


つやつやに光る、透明な赤に透けている、真っ赤。


手を引かれて歩いた、小さな頃。


人波の隙間に見つけるといつも、一番にねだっていた。


大好きな、りんごあめ。



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