愛を教えて欲しくない
ご機嫌な慧がフレンチトーストを作っている間に私は終わっていなかった荷解きをしようとリビングに積み上げられていた山ずみのダンボールの1番上の箱をとってソファの前に座った。
ついでに停止したままだったアニメを流そつと再生ボタンを押すと、音に気づいた慧が「 それ俺もみたい」と言いだしたので、仕方なく慧の興味がなさそうな録り溜めておいたサスペンスドラマの再生ボタンを押した。
案の定興味はなかったのか慧が何も言わずにバッドに牛乳をコトコトと流し入れ始めたので、ダンボールの山からもうひとつ荷物を運んで荷出しを始めた。
ドラマも中盤に差し掛かった頃、できたよという慧の声に遮られドラマを止めてテーブルの方へ移動した。
テーブルにはできたてほやほやのフレンチトーストとミルクが添えられたホットコーヒーが並べられていた。
「美味しそう」
「我ながら上手くできたからね。はい、食べよっか」
食器棚から慧が取りだしたフォークを受け取って「ありがとう」とお礼を言えば、まじまじと私の顔を見つめてくる。
「なに、どうしたの?」と首を傾げて座れば大きく口角をあげた慧が「今の夫婦みたいだったね?」と私に問いてくる。
「ばかじゃないの」
「あーあーもう照れちゃって」
「とこが照れてるの?」
ぶっきらぼうに返答すれば上げた口角がにまにまと忙しなく動き始めたので、無視してま「いただきます」と手を重ねて冷めないうちにふわふわのフレンチトーストを食べ始めた。
「どうですかぁ?」
目をキラキラさせながら、褒めの言葉を期待してくる眼差しで見つめる慧にすごい美味しいよとらしくもなく素直に伝えてみれば、思ってもない返答だったのか、慧は「そっか」と少し照れたように、嬉しそうに笑った。