何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「…死刑…。」
天音は、その掲示の前で立ち尽くしていた。
妃候補の見る掲示板にも、月斗の死刑の告知が張られてあった。
「ええ。明日の夕刻。」
今日の星羅はいつも通りのまま、天音の横に立っていた。
「つ…き…と…。」
天音には、その名を呼び、自分の拳を握りつぶす事しかできない。
また、この国によって犠牲になる人が出てしまう。
「あの目つきの悪い、かっこいい人でしょ?てか天音、いつの間にかあの人と知り合いになってたよねー。」
ここへきても華子は空気を読む事はない。
いつもの調子で能天気な発言をしてみせた。
「…これがこの国のやり方。」
「…。」
星羅がつぶやいた言葉にも、天音は無表情のままで、ただ、じっとその掲示を見つめていた。
「あの人が、こんなに簡単に殺されちゃうんだ…。」
しかし、華子もなんだか腑に落ちない表情で、口を尖らせた。
「…さあ?このままで終わればね。」
「へ?」
すると、そう言った星羅が、珍しく口元に笑みを浮かべた。
それは何かを予感させるものであるのは、確かだった。