何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「どういう事だよ…。」

演説は、老中の用意したシナリオ通り、京司の代わりの()()者がそつなくこなした。
演説が終わった後、兵士の腕から解かれた京司は、バルコニーに面した部屋の奥に、小さく座り込んでいた。

「あなた様がちゃんと台本通りにお話くだされば、こんな事には…。」

老中が冷たい視線で上から、京司を見下ろしている。

「ふざけんな!なんなんだよコイツは!」

京司の目は怒りに震えていた。
そして、老中の隣に立つ、〝天使教”と名乗る男を見上げた。

「本来であれば、もしもの時のあなた様の身代わりです。」

老中は、怒りに震えた京司とは対照に、いつものように冷静に答える。

「もしもだと?誰なんだよ!!」

バサッ

京司が声を張り上げ、その身代わりの男の、顔の布をはぎとった。

「…。」
「…お前…。」

京司は目を大きく見開いた。なぜなら、そこにある顔を京司は知っていた。
それは、男と呼ぶにはまだあどけない、少年のような顔立ち。
そして、忘れるはずない、あの透き通るような青い目。

『僕は僕、君は君だよ。』


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