揺るぎのない愛と届かない気持ち

お義母さん2 〜東吾

紗英が長内に襲われた
狂気のような日の翌日から、
俺と紗英は警察との対応に忙しい思いをした。

悠も紗英が落ち着かないからか、ご機嫌が悪い。
子供は正直だ。

日に日に大きくなっていく。
表情らしきものも、随分と出るようになった。
喃語らしき声も出して、その自分が出した声に
驚いているような様子も見せる。

可愛い。
可愛い、本当に可愛い。

紗英はしばしば、
長内から襲われたあの光景が
フラッシュバックするようだ。
しっかりと目を瞑り、じっと微動だにせず
その状況を自分から逃がそうとしている。

今もまだ別居しているが、
こういうことが頻繁にあるとお義母さんは
言っていた。

俺さえちゃんとしていたら、、、
きちんと長内の気持ちにケリをつけていたら

後悔しかなかった。

「東吾くん、
こればかりはどうしようもないことね。
もちろん以前のことも今回のことも、
許されることではないけど

彼女のあなたに対する執着心を、
自分でもコントロールできなかったんですもの
あなたがコントロールしてあげることも
不可能だったでしょ。

紗英と結婚しなければ、
こんなに酷い目に遭わせなかったのにって、
思っているかもしれないけど、
紗英のことを愛して結婚しちゃったのよ、
子供も生まれて、
あとは、
あなたがあの二人を守っていくしかないわね。」

お義母さんは俺にそう言ってくれた。

「ところで、東吾くんの転職の話はどうなったの?
この件で滞っているのじゃなくて?」

ちょうど転職の話の最中に今度の事件が
起きたため、俺の転職は
宙ぶらりんの状態になっていた。
しかも、
事件の影響で2社ほど俺の雇用に難色を示された。
自己管理ができてない男が、
どれほどの仕事ができるのか、と
思われたのだろう。

うまく進んでいた再就職の話も、
ここにきて少し暗礁に乗り上げてきた。

「先日も篠原のご両親が見舞いに見えた際、
地面を這いつくばってでも
生きて家族を養うということを、
示してほしいって、おっしゃっていたわ。

中々気骨があるお父様で、
あのお父様の子さんならって、
東吾くんとの結婚も安心していたのだけど、
うまく遺伝しないこともあるのかしらね。」


耳が痛い。
お義母さんの毒舌は回復していた。

お義父さんに叱られて、しゅんとなっていたが、
翌日からは回復されて
俺たちのこと、
長内のことなどで奔走されている。



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