揺るぎのない愛と届かない気持ち

これからに向けて

私たちはお互いの家族の支えがあって、
無事に海外生活を送ることができた。

あの事件からしばらくの間、
長内さんの幻影に怯え、フラッシュバックを
起こしていたが、
拠点を海外に移して、
そういう心理的な圧迫からも逃れることが
できたようだ。

あれから2年半、
私もすっかりと落ち着いた。

高木の家から厳命されて
こちらで勉強していた東吾さんも、
大学の課題より厳しい、
母からの課題をこなしながら
自分に課せられたことをクリアしていった。

今は
高木の家と交流があった
一族の会社でのインターンも卒業と同時に
終了したが、
卒業した後も、しばらく勉強ということで、
そちらの仕事に忙殺されている。

ある時は顔色悪く
ある時は完徹で課題をこなし、
今までの中で一番勉強したと言っていた。

目の前に紗英の婿として認めてもらえる
という人参を
ぶら下げてもらったから頑張られたと、
言っていた。

私たちの仲は、、、、、

彼が大学院で勉強している間は、
同じアパートメントの違う部屋にいた。
寝るためだけにそこへ帰っていたという方が、正しい。
自分に対するけじめらしかった。
私は、
同じ家の違う部屋ぐらいの認識しかなかった。

もちろん悠が病気をしたり、
私の具合が悪かったりしたら
彼はそばに居てくれた。

今時の高校生もこんな純愛はしないだろうと、
いうほどの潔癖ぶりで
キスはおろか手一つ握ることもなかった。

「ケジメって、カッコよく言っているけど、
紗英にいったん手を出した
俺、止められなかった自信がある。
際限なく、
紗英を求めて壊してしまったかもしれない。」

臆面なくそういう東吾さんは、
側にいる。
私の横で、同じベットの上で並んでいる。

彼が学位を取得して無事に大学院を
卒業した頃、
私から同居を申し出た。
信じられなかった彼は、
どの部屋にいたらいいと、、、
私の部屋以外どこがあるのと返したら、
満面の笑みで深くキスをしてくれた。
その後
がっついてごめんと謝られたけど。

悠は相変わらず、
夜になるとパパが帰ると思って、

「また、あした。」

ってしばらく言っていた。

今は、大好きなパパと夜も一緒に
いれるのがうれしいらしく、
寝る前に、本を何冊も読んでもらおうと、
構えている。

1日に一冊ねと、
彼から約束させられていたけど。



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