課長と私のほのぼの婚
やはり企画課リーダーはレベルが違う。冬美はますます感心しながら、ぱくぱくと料理を食べた。どれもこれも実に美味しい。


「先代が引退して足が遠のいたけど、今日は来てよかった。嬉しい偶然もありましたし」

「嬉しい偶然?」


課長が深くうなずき、明るく笑う。よく分からないが、よほどいいことがあったのだろう。

冬美も釣られて笑い、ご機嫌な彼に調子を合わせた。


「それは良かったですね」

「はい。ふふっ……」


課長を見てると、なんだかほのぼのする。

この人が上司なら、毎日楽しく仕事ができそう。経理(ウチ)の課長と代わってくれないかなあ――わりと本気で考えながら、いよいよメインの金目鯛へと箸を伸ばした。


「わ、美味しい!」


甘辛のたれをまとう、脂ののった柔らかい白身。これが魚? ほっぺたが落ちそうという表現があるが、まさにそれ。


「これが伊豆下田の名物、金目鯛の煮つけなんですね」

「そのとおり。名物に美味いもの有り。下田は他にも、伊勢エビやあわびが名産ですよ」

「へえ……」


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