私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠


 菜々美は奏佑に対する悶々とした思いを抱えていた。
その反対に、家の売却も新しいマンション購入も順調で、後は引っ越しだけだ。

面倒だから有給を取って、一気に片付けてしまおうと思っていた。

そんなある日、高村から連絡が入った。

「もしもし…。」
『お仕事中にすみません。今、大丈夫ですか?』

「はい。何か、お急ぎですか?」
『鳴尾様が検査入院なさいまして…今日、お仕事帰りにでも病院へお越し願えませんか?』


「入院?どちらにでしょう?」
『脇坂総合病院です。』

「仕事の後ですと、19時くらいになりますが。」
『病院の受付には伝えておきますので、よろしくお願いします。』


そう言うと、高村は電話を切った。
早口で喋っていたし、かなり急いでいる様子だ。祖父の容態が気にかかる。

『脇坂総合病院か…』

脇坂奏佑の実家だ。彼に会いたくはないが、祖父に何かあってはいけない。
確か病院の場所は…『田原診療所』からも近かったはず。

少々気が重いが、見舞いには行こうと菜々美は決心した。


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