私を赤く染めるのは

「ごめんね、たくさん待たせて」

「ううん、ゆづと一緒に過ごせる時間が増えて嬉しかったよ。俺の気持ちに向き合ってくれてありがとう」

その言葉に首を横に振る。

「違う……」

私は碧人くんと向き合っていたんじゃない。

必死に“煌を忘れる方法”と向き合っていたんだ。

お礼なんて言わるれる筋合いがない。

「十分向き合ってもらったよ。ちゃんと返事くれたじゃん。だからありがとう」

「ありがとうって言わなきゃいけないのは私の方だよ。好きになってくれてありがとう、ずっと側にいてくれてありがとう」

碧人くんは小さい頃から優しくて、頼りになる憧れのお兄ちゃんだった。

その気持ちは、これからもずっと変わらない。


こんな私を好きになってくれてありがとう……。

私は心の中でもう一度、そうつぶやいた。




「それにしても、初恋がアイドルって相当難易度高いぞ?……頑張らないとな」



どこまでも優しい碧人くんに胸がチクリと痛んだけれど、私はこの胸の痛みを無視するのではなく、きちんと受け止めなければならない。

「無謀だよね」

「だな。でも、頑張るんだろ」

「……うん。私、頑張るから」

もう、自分の気持ちから目を逸らしたり誤魔化したりしない。

もう一度、煌に会って今度はちゃんと自分の気持ちを伝えるんだ。


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