私を赤く染めるのは
会場にはメンバーカラーの服を着る人やボードに団扇などを持つファンが大勢集まっていた。
9割近くが女性のファンだ。
普段なら圧倒的に煌のメンバーカラーである赤が目立つのだが、今日はあまり見当たらない。
見かけるのは一吹のファンを表すブルーの服や団扇ばかり。
少し早めに会場に着いた私は、時間になるまで近くのベンチでスマホを見ていた。
すると、隣のベンチに座った2人組が大きな声で会話を始める。
「やっぱ煌のファン少なくない?あの記事のせい?」
「そりゃそうでしょ。いくらイケメンでも性格悪いのは無理だって」
「友達の煌担も握手券捨てたって言ってた」
微笑と共に聞こえてくるのは煌の話題。
確かにショックを受ける気持ちもわかる。
でも、煌の口からはまだ何も聞いていない。
「煌に文句言うために行くって言ってた子もいたよー」
「てか煌、今日どんな顔して出てくるんだろうね?」
「誰かレポあげてほしー」
この子達は本当にBijouのファンなのだろうか?
まるで煌へのバッシングを楽しんでいるかのようだ。
これ以上は聞いていられなくて、ベンチから離れる。
目的もなく歩いていると、会場横にあったCD販売のスペースが目に入った。
そこでは先日発売された『振り向く君に』が販売されていて、握手券が入っていれば今日の握手会に参加できる仕組みになっている。
「……買ったところでね。出るとは限らないし。……私が行ったところでね」
そんな言い訳を並べながら、私は気づくとその列の最後尾に並んでいた。