私を赤く染めるのは
君が隣にいれば


煌と付き合い始めたことを直接朱莉に話すと、朱莉は驚きつつも喜んでくれた。

碧人くんも同じで「よくアイドルなんか落とせたな」と冗談混じりに笑ってくれた。


そして、12月5日。


煌と付き合ってから1ヶ月が経った。

ファンミーティングの準備で忙しい中、煌は合間を縫って会いにきてくれたのだ。

「2週間ぶりだね?」

「やっと一息つけるよ」

結局、煌への記事は訂正されなかった。

けれど、その後例のアイドルと一吹、それから煌スリーショットがSNSにアップされたことによって不仲説はなくなり、バッシングも徐々に落ち着き始めた。

煌のファンはまた着実に増えていっている。



煌と私は主にうちで会う。

同世代がしているようなデートはできないけれど、それでも十分幸せだった。


「そういえばこれ1ヶ月記念のプレゼント」

昼食後、煌はそう言うとラッピングされたピンクの袋を鞄から取り出す。


「わーありがとう!なんだろう。開けてもいい?」

「いいよ、俺とお揃い」

その言葉にリボンを解いていた手がピクリと止まる。


「お揃いとかだめでしょ?匂わせにファンは敏感なんだから」

「まぁ、いいから開けてみろって」

煌が早くと急かすので、私は改めてリボンを解く。

袋の中から出てきたのは……。

真っ赤なレザーにKou と彫られたもの。


「これってこの前発売されたグッズ?」

「正解。これなら匂わせとかじゃないだろ?ただ、俺が直接プレゼントしたのは結月だけ。ある意味特別じゃん?」

……確かにこれなら煌のファンの多くが持っている。

「あ、もしかしてもう持ってる?」

「持ってない!ハチのは買ったけど」

「おい、俺のは?」

「私、煌のことは好きだけど、推し変したつもりはないから」

「はいはい、そうですか」


「ありがとう煌」


私は早速それをポーチに付ける。




翌日、電車内では同じものを付けている人を何人も見かけた。

……確かにこれなら匂わせ要素ゼロだわ。




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