私を赤く染めるのは
近づく距離

ピピピピッ、ピピピピッ、


聴き慣れたアラーム音が何度も朝を知らせる。


私は慣れた手付きで頭上近くに置いてあったスマホを探し、アラームを止めた。


今日は土曜日。

しかも今は夏休みで学校も休みだ。

今日ぐらい寝坊をしても誰も怒らないだろう。


さて、もう一眠りするか。

「はぁーあ」と大きなあくびをして寝返りを打とうとしたその時、ドスンという音と共にベッドが深く沈んだ。



「っゔ……何」

巨大な隕石でも落ちてきたかのような衝撃に、さすがに瞼を開ける。

ぼやーっと見える人影はベッドに腰掛けこちらをじっと見つめていた。

「飯」

そう言い捨てた顔は今日も相変わらず綺麗だ。


「Bijouの煌だ〜」


ふふ、なんて贅沢な夢だろう。

朝から煌が私を起こしに来るなんて。



でも、どうせならハチが良かった……な。

もう一度、夢を見たらハチに会えるかな。

ああ、でもその前にこの寝不足をなんとかしないと。


……って、あれ?

そういえば私って、なんで最近寝不足なんだっけ?


…………………………。



「って違う。これ現実だった」

目の前の煌から初日に感じた体温、匂いまでがリアルに蘇り思わずベッドから飛び起きた。


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