激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

「美優」

それでいて名前を呼ばれただけで、緊張してしまう。

「……早かったですね」
「ああ、どんな反応するかなって楽しみでな」

車に乗り、シートベルトを締めてからちらりと彼を見た。
すると、どうした? と少し首を傾げてこちらを見るその仕草。
最高に甘すぎる。私は微笑まれるたびにお金を払わないといけないんじゃないか。
そんな風に未だに、現実感が感じられなくて戸惑った。

「そういえば、ガラス瓶のデザイナーが……」
「ん?」

 上の空だった私は、慌てて首を傾げると、彼は少し視線を向けてから前を向いた。

「いや。もうすぐ完成だなと」
「そうですね。アロマキャンドルって冬の時期にお風呂でも使えるし、やっぱり最高ですよね」
「ああ。一緒に使ってみよう」

 それは一緒にお風呂に入るってこと、ですよね。
 真っ赤になって固まる私を見て、宇柳さんは笑った。

ククッと押し殺したように笑う声も、嫌いじゃないから困る。

「美優、信号だよ」
「見ればわかる――って、んっ」

思い切り横を見ようとして、先に唇を奪われた。
離れた唇が濡れていて、それを舌が感触をなぞるように動く。

「歯を食いしばったら、舌がからめないから開けてほしいな」
「なっほんっとに宇柳さんってキス魔ですね!」

ボコボコと肩を叩いても、彼は上機嫌だった。いや、それにしても彼が上機嫌すぎて怪しい。
何か、本当に大変なことがあった気がする。
「……で、何を隠してるの?」
まだ顔がにやけている彼が、少し不気味だった。
再度、聞くと一瞬こちらを見た後、また前を向いて誤魔化した。
「ねえ」
「美優からキスしたら教えてもいいけど?」
「ばっ」
そんなに安売りしません。と窓の景色を見る。上手く逃げれたと、思うなよ。絶対に教えてもらうんだから。
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