激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

「……なんか、ちょっと今日、大人ぶってません?」
「ぶっ 大人って、俺の方がどうみても大人だろ」


髪を掻き上げながら、余裕な顔で珈琲に手を伸ばす。

気になりつつもモモのコンポートタルトに大きな一口の切り込みを入れた。
珈琲の最後を一気に飲み干すと、彼はモップを抱きかかえて口づけた。
そのままお腹を撫でたり、頬を舐めさせたりご機嫌だ。

「少し歩こうか」

モップは走り回ってお眠むになってくれたらしい。ペット用のキャリーケースに入れ、再び彼と手を繋ぐ。

歩いて向かう先は、駅前のイルミネーション。アロマキャンドルと称して色んな香りや企業のイルミテーション部分はカップルが多かったけれど、そこ以外はゆっくり手を繋いで見て回れた。なるべくうちの会社の提供部分から離れて歩く。

指先を握っただけの、軽いつなぎ方だったけれど、周りが腕を組んでいたり恋人つなぎなのを見て、腰を引き寄せられた。

「初めて会った日のこと、話してもいいか?」

 私も腕を組んで、頷く。お互い変に緊張して、一瞬ぎくしゃくしたけどモップの小さな鳴き声に普通通りに戻った。キラキラと輝くライトの前を通ると、私たちの影が重なって伸びていく。それすらも、美しく思えた。

「あの日は、仕事で急遽連れて行かれて不満が爆発しそうだった。その上で、みどりからもらったネクタイを汚して最悪最低な日だと思った。最悪だとか不満をため込むと視野が狭くなる。隣にずっと再会したいと思っていた君がいることに気づくのが遅れたぐらい」
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