激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす


 私も私とは住む世界が違う人だと、横を見て驚いたのは覚えている。
 恋愛感情へ変わることもないだろうって、絶望の中は何も見えていなかった。

「仕事で再会するよりはここで君を知りたいと思った。今にも崩れてしまいそうな不安定な部分が心配だったし、お酒で潰れてしまうほど自分を大切にしていなかったし」

「それは……今はもう聖さんのおかげで前を向けていると思います」

「そうだね」

 途端に誰も人がいなくなった。
 辺りを見渡すと、何故かクリスマスツリーの前だけ人が寄ってきていない。
 不思議に思ったけれど、彼がツリーの前のベンチに座ったので隣に座った。

「美優は頑固だった。頑なだった。けれど壊れてしまいそうに亡く君の為に、都合のいい男を演じてみた。だがあの時気づいたんだ。やはり恋人として抱きたいな、と」

 ハワイでの夜は、私たちにとっても順番を間違えたことは分かっている。
 けど彼も私も後悔はしていなかった。

「ここまでペットを家族のように大切にする女性は、きっと家族も恋人も大切にするんだろうなと。最近、毎日顔を合わせる度に君が好きだと気づく。俺のことを考えて、幸せに笑ってくれるよう、俺を好きでいてほしい」

好きにならせたいってまあ、傲慢な考えだなってちらりと睨むけど、彼は全く悪ぶれもせずに、嬉しそうに話していた。彼にとってそれが最高の愛情表現なのかもしれない。
クスクス笑ったら、頬を撫でられた。
急速なその動きに、身体が固まる。
するとはらりと頬に降りていた髪を、耳にかけられ、その指がゆっくり首に降り、肩に降り、私の右手を掴んだ。
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