激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

 滲む視界の先で彼も私を見て、苦しそうに眉を歪ませている。

 どうして赤の他人である私にここまで優しいんだろう。
 どうして分かってくれようと、近づくの。
 どうせ、姉にこの人も奪われるんだ。

 今までずっと全て奪われ馬鹿にされ、捻くれて可愛くないの、私。
 性格だってこんなに悪いのに。
 全身が震えていた。苦しくて、悲しくて、そしてそれでも信じられないのに、彼の表情が愛おしかった。

 この一時でもいい。今だけでもいい。

 消えてしまいたい自分を、話さないで欲しかった。

「だったら止めて。この震えを止めてよ」

 縋ったのに、彼の背中を抱きしめるには手が震えて、力が入らなかった。
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