激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
「あっ」
意固地になって名前を呼ばすに、内心『彼』と呼んでいた。絶対にハワイで関係が終わるはずだとか、期待しないとか。
「仕事中なので」
「二人の時は下の名前って事か」
上機嫌で言う彼は、驚くほど柔らかい顔をしている。
こんな時でなければ、私は浮かれて仕事中も宇柳さんに見とれていたかもしれない。
今は複雑だ。
「せっかく服を贈ったのに」
「着るわけないです」
私服でスーツ姿の宇柳さんの隣にいるのは、少し申し訳ないけど。
「急にお願いしたから、服装で悩まれたら申し訳ないなって思っただけだよ」
彼なりの優しさだったらしい。
色々と勘ぐってしまって申し訳ない気持ちもある。
「ここは緑葉に包まれていて綺麗ですね」
休憩中なので仕事モードになるのも違うのかと、当たり障り話へ誘導してみた。
「ああ。ステンドグラスの様々な色の乗った光が、緑に似合うと思うんだ」
「確かに美しいです」
オフィス街の中、切り取られた絵画のような美術館。カフェでランチを食べているときも、上品そうなお客様たちや旅行客が訪れていた。
「私、バイト先の教会のステンドグラスが本当に好きだったんです」