激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

 シャガールのステンドグラスの下、幸せそうな挙式をスタッフサイドで眺めていくうちに、結婚にも憧れたしステンドグラスの魅力にもハマっていた。

 結局は、姉にキラキラしたジュエリーデザイナーを目指していると勘違いされて、デザイナーの道は諦めるしかなかった。

 社会人になってまで姉と同じ職種で比べられるほど、苦痛なことはない。
 それに私が香りフェチなことも気づかれずに済んだことは、助かってもいる。

「うちのステンドグラスが好きだと言ってくれる人と仕事ができることは、俺も光栄だ」

 宇柳さんは微笑んだあと、珈琲の香りを吸い込んで嬉しそうだった。
 調子が狂う。
 見た目が整っているとか、ハワイでも地位のありそうな素振りから、私は彼が女性関係が派手だとか勘違いしていたのかな。
 本当のあなたは、あの夜が真実だったらーー。
 甘い夢を見ようとした自分を、振り払うかのように首を振った。

「食べたら、アロマを入れるガラス瓶の種類について、色々と相談させてください」

 色々挫折してきたけれど、好きな仕事だけは手を抜かず頑張ろうと、心に蓋をした。
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