白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
10章:愛してる

 次の日の帰り道、私はある洋菓子店の前で足を止めた。
 確か今日の朝、ここのスイーツの話を会社で聞いたような……。

 ショーケースには色とりどりのケーキと、プリンが4つ。
 私は散々迷った末に、店員さんに声をかけた。

「……プリン、2つください」
「申し訳ありません。たった今、売り切れまして……」

 本当に申し訳なさそうに店員さんが言う。
 ちょうど、私より少し先にプリンを4つ買った人がいたらしく、もう一人の店員さんがそれを箱に詰めているところだった。

 それを買ったらしいスーツ姿の男性と目が合う。男性は少し申し訳なさそうに私を見ていた。

「あ、じゃ、じゃあ、いいです」

 私はぺこりとお辞儀をし、足早にその場を後にする。

(っていうか、連日、琥白さんの好物買って帰るとか、意味深すぎるもんね! 売り切れてむしろよかったかも……!)
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